ごめんね、ハンナ。
ママはどうしても、
あたなと出会う未来を
諦められないの。
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ある日突然世界の12都市に、
謎の飛行体が出現した。
その物体には、地球外の生命体と
思われるものが乗っていて、
各地でその生命体との接触が図られた。
アメリカでも軍が出動し、
彼らと接触を試みたものの、
彼らの発する音のようなものが
何なのか解読出来なかった。
言語学者の協力を仰いでも。
そこで同じく言語学者である
ルイーズに白羽の矢がたった。
彼女は以前、軍の要請で、
通訳の仕事をした事があり、
とても有能だと知られていたから。
彼女の元を訪ねた大佐は、
知的生命体の音声を録音したものを
彼女に聞かせたが、
それだけでは何も分からない。
実際に会ってみないと解読出来ない
…と言う彼女。
そうして再び、
"彼ら"との意思の疎通を図る事に。
今度は言語学者のルイーズと、
物理学者のイアンの二人を
中心としたチームで臨んだ。
宇宙船には定期的に接見のために、
入り口が開かれ、
軍の数名を伴い、
"彼ら"と接触を図る二人。
最初は彼らの"声"を
理解しようとしたものの、
何を伝えようとしているのか
解読出来なかった。
そこで考えた彼女は、
ホワイトボードを持ち込み、
そこに自分の名前を記した。
そうして宇宙船内の接見の場では
万が一に備えて
防護服を着ていたのだが、
それを脱ぎ捨て、
自らの顔を"彼ら"へと見せ、
音声も併せて
『ルイーズ』という文字と、
それが自分を表している
言葉だと教えた。
するとそれを理解したのだろうか?
7本足のたこのような姿の"彼ら"は、
足の一つから墨のようなものを出して、
丸い形にはねやはらいを盛り込んだ、
記号のような文字のようなものを綴った。
そんなやり取りを何度か繰り返し、
ルイーズだけでなく、
イアンも彼女を真似て防護服を脱ぎ、
自らの名前を教え、
少しずつ"彼ら"の
文字を理解出来るように。
そうして7本足の"彼ら"は、
『セプタポット』と呼ばれるように。
足が7本ある所から、
そうイアンが名付けたのだ。
少しずつではあるが、
確実に前進していたし、
世界の12都市が衛星で回線をつなぎ、
互いに情報を共有して
協力していたのに。
ある時を堺に、
情報の共有はされなくなり、
世界は互いに回線を遮断してしまった。
更にはそれぞれの都市独自に
言語学者が解読を図っていたため、
彼らのメッセージから
攻撃の意図を汲んだ者もいた事から、
中国の将軍は
セプタポットを
攻撃する事を発表したのだ。
"彼ら"に攻撃の意思があるのなら、
やられる前にこちらがやる…と。
そうして中国に感化されたのか、
それに続くように
幾つかの都市もまた
セプタポットへの攻撃を決めた事が、
ニュースで知らされるように。
そんな中、それでも
ルイーズもイアンも、
また彼らのスタッフも、
懸命にセプタポットからの
メッセージを
解読しようと試みていた。
そうして一番セプタポットに接触し、
"彼ら"を理解しようと
図ったからだろうか?
ルイーズは休憩で休む度、
また起きている時でも、
時折謎のビジョンを
見るようになっていた。
そこで彼女は
知らない女の子と過ごしていて、
次第に彼女は成長し、
賢く美しい少女になった。
そうしてハンナと名付けられた少女は、
ある日不治の病に侵され、
若くしてその生涯に
終わりを告げてしまうのだ。
何度も愛らしい笑顔と声で、
ルイーズをママと呼ぶ彼女。
彼女は…、ハンナは、
ルイーズが未来に出会う
ルイーズの娘。
そう、彼女は
未来が見えるようになったのだ。
そうして世界の情勢が、
戦争へと向かっている頃、
ルイーズたちの解読した
メッセージからも、
武器を与える…と
言ったものが出て来たため、
アメリカもついに武力行使か
…と言う雰囲気に。
そして一つだけ
解けなかったメッセージを
イアンが解読した所、
それは12都市すべての
セプタポットからの
メッセージを合わせないと
解読出来ないものと判明。
それを大佐に告げたものの、
回線が遮断されている今、
それは難しく、そもそも情報共有に
メリットがあると考える訳がない
…と切り捨てられてしまう。
そんなハズはない。
きっと情報共有は利益になる。
アメリカにとってだけでなく、
おそらく12都市すべてに。
いや、全人類にとって。
それはきっと
非ゼロ和ゲームとなるハズだ。
そんな彼女の思いとは裏腹に、
いよいよ中国が
戦争を仕掛けるという頃、
アメリカはセプタポットとの接触を
終了する事を決めていた。
けれど、彼女は納得出来なかった。
もしかしたら違うメッセージがあって、
読み違えているのもかも知れない。
"彼ら"が人類の言葉の意味を
間違えて覚えてしまって
いるのかも知れない。
そう思った彼女は、
一人セプタポットとの接触を試みた。
そこで彼女は
"彼ら"からの
メッセージを聞く事に成功。
セプタポットは人類と戦う意思はなく、
遠い未来、"彼ら"を人類が助けるから、
だから今人類を助けに来たのだ
…というのだ。
そう、彼らには未来が見える。
だからその力が彼女に
作用したのかも知れない。
そして彼女は、現在のバラバラで
今にも世界規模の戦争に
なりかねない状況を説明すると、
ルイーズは既に武器を持っている。
後はそれを使えばいい。
そうメッセージをくれた
セプタポット。
武器とは何か?
どう使えばいいのか?
混乱してしまった彼女は、
混乱の中、
また新たなビジョンを見た。
それはセプタポットとの接触により、
彼女が"彼ら"の意思を
正しく解読した事で、
世界で争いが起こる事なく、
協力しあい平和的に解決出来た事で、
彼女の功績が讃えられ、
表彰される…というもの。
その中で、
彼女の功績を称える為に、
アメリカとあまり
いい関係とは言えない
中国の将軍が駆けつけてくれていた。
彼はアメリカには恩はないが、
彼女があの日彼に電話を掛けて
彼を説得した功績があったから、
今の平和があるとし、
お祝いに
駆けつけてくれたんだとか。
あの日の君の言葉が
私の考えを変えたんだ。
そういう将軍に驚く彼女。
私があなたを説得した?
訊ねる彼女に彼は、
そう、私のプライベートナンバーに
電話を掛けて、
攻撃の直前だった
私の考えを変えた。
その言葉を使って。
言語学者である彼女の
心からの言葉に、
心を動かされたという彼。
しかし、彼女は
彼の番号など知らなかった。
所が、困り顔の彼女に
彼は自分の携帯電話を取り出し、
その番号を見せてくれる。
今君は私の番号を知った。
良く分からんが、
これで役に立つのだろう?
そう笑う将軍。
彼の言葉通り、
それはとても役にたった。
だって、彼女は未来が見えるから。
将軍が攻撃を仕掛ける前に、
このビジョンを見たおかけで、
彼女は将軍に
電話を掛ける事が出来たのだ。
けれど、衛星回線を使った通信は、
すぐに軍の知る所となり、
中国との勝手な交渉を
軍の人間が快く思うはずもなく、
妨害されそうになってしまう。
そんな時、
騒ぎを聞きつけたイアンが、
彼女を助けてくれたのだ。
互いに力を合わせ
セプタポットの文字を
解読してきた二人は、
この電話の一件により、
更にその絆を深める事となった。
そうして彼女の説得の甲斐あって、
中国は攻撃を止め、
また中国に賛同した他の都市も、
倣うように攻撃を中止した。
そうして人類は争うのではなく、
言葉を交わし、
協力しあう事の大切さを学んだ。
すると、
それに呼応するかのように、
12都市に現れていた飛行体は、
次々とその姿を消してしまった。
危機は去った。
争うのではなく、語り合う事で、
人類は危機を乗り越えたのだ。
一方彼と絆を深めた彼女は、
すべてを知ってしまった。
イアンと彼女が愛し合う事で、
ハンナが生まれ、
そうして沢山の
幸せをくれたハンナは、
不治の病で死んでしまう。
それを知っていた彼女は、
彼にその事を話してしまった為、
娘の死…という
未来を話す彼女から、
彼は離れてしまったという事を。
最愛の娘を失うという未来。
心が引き裂かれるような、
身を切られるような悲しみ。
それを知ってしまった彼女。
それでも彼女は
彼を愛する事を止めなかった。
だって、そうしなければ、
ハンナと言う最愛の娘とは
出会えないのだから。
失うと分かっていても、
その時が来るまでに
ハンナが彼女にくれた幸せは
計り知れないものだから。
変えられない未来だとしても、
どうしても娘に会いたかった。
愛らしい声と笑顔で、
ママと呼びかけるハンナに。
けれど、もしかしたら
一つだけ変えられるかも知れない。
それは彼女の見たビジョンの中で、
彼女は一人で娘の死を
受け止めていたけれど、
これから来る本当の未来では、
その隣に彼が居て、
互いに支え合えるかも知れない。
だって彼女は
もう手にしているのだから。
言葉という大いなる武器を。